種田山頭火の絶筆が偽作だった?

執筆者:一山頭火ファン

サンデー毎日の本年(2022年)5月22日号に「種田山頭火の絶筆は偽作だった 該当部分を削除した全集が出版」という記事が掲載されている。内容はと言うと、長野県在住の山頭火研究家である古川富章氏が山頭火の絶筆(=最後に書いた文章)とされていた日記が実は偽物であることを突き止め、これによって春陽堂書店がそれを除いた「新編 山頭火全集7巻」を発行するというものである。

新編 山頭火全集 7巻

そもそも、どうやって偽物だと見抜いたかというと、絶筆とされている日記のコピーを筆跡鑑定に出し、その結果、山頭火が書いたものではないとされたとのことである。この絶筆とされているコピーを春陽堂書店に持ち込んだのはNPO法人まつやま山頭火倶楽部の高橋正治理事長だそうである。高橋理事長の父、高橋一洵氏(故人)は山頭火との交流で知られる人物である。その一洵氏の仏教書に挟まれていたノートの切れ端に問題とされている日記が記載されていたとのことだが、持ち込まれたのは日記の「コピー」であり、日記そのものではないようだ。

文章には一洵氏が登場することから、春陽堂書店の編集者は一洵氏が「自分が山頭火に一番慕われていたように見せたかった」ために偽作したと推測している。また、古川氏は高橋氏に「コピー」ではなく、原本の提出を求めている。

以上が記事の内容であるが、高橋一洵氏は既に故人であるため、真相はわからない。理論的には高橋一洵偽作説以外の可能性もありうる。偽作の決め手となったのは筆跡鑑定のようだが、筆跡鑑定は絶対的な確実性に欠けているとされている。筆跡鑑定と言えば、例えば遺産相続問題の際の遺言書の偽造などが争点となったりすることもあるが、実際、鑑定は参考とはなっても100%確実とは言えないようである。裁判の際、証拠とはなっても決定的証拠とはならないのが実情のようだ。

こうした点からも、潔白なのであれば高橋氏自身、原本を後悔し、自らと自らの父親の汚名をそそぐことが望まれる。いずれにしても、山頭火ファンとしては青天の霹靂と言える記事だった。