住宅顕信を描いた映画「ずぶぬれて犬ころ」から考える

執筆者:凡夫

25歳の若さで世を去った自由律俳人の住宅顕信を描いた映画「ずぶぬれて犬ころ」の制作が進んでいます。

完成予定は2018年の2月ということで、顕信が生きた岡山でロケが行われているようです。

監督は岡山県赤磐市出身の本田孝義氏、顕信役には木口健太氏が他にNHKの朝の連ドラ「あぐり」のヒロイン役だった田中美里 氏も出演するようです。

製作費はクラウドファンディングで集められました。

目標250万円だったのが、それを上回る300万円集まったそうです。

この題名である「ずぶぬれて犬ころ」というのは、住宅顕信の代表句の一つです。

すごく印象的な句ですね。

因みに顕信が傾倒していた尾崎放哉には「朝早い道のいぬころ」という句があります。

若くして亡くなったこともあり、顕信はそれほど多くの句を残していません。

生涯で詠んだ自由律俳句はわずか281句です。

しかし、その句は非常に高い評価を受けています。

自由律俳人として世に名高い人物としては尾崎放哉種田山頭火が挙げられますが、それらの句に匹敵するとも言われているほどです。

顕信の代表句として、他に「若さとはこんな淋しい春なのか」というものがあります。

浄土真宗の僧侶でもあった顕信は普通の人達よりも死と向き合えた面はあったのかもしれませんが、それでも、そんな若さで亡くなるのは無念だったと思います。

しかも幼子もいたわけですから…

ところで顕信の俳句の才能は生前から一部の人達には知られていましたが、多くの人に知られるようになったのは亡くなってからだと言えます。

一人の若者は亡くなりましたが、残した俳句は多くの人々を魅了し、生き続けていると言えます。

俳句には人間の寿命を超えて生き続ける、そうした魅力があります。

それにしても、放哉や山頭火のように人生自体がドラマになるかと言えば、顕信の場合、一般人よりも劇的な人生だったとはいえ、ちょっと微妙な感じ…

どのように映画が仕上がるのか、期待と共に不安もあるのが正直なところです。

ですが、住宅顕信の句は本当に人を惹きつける魅力があります。

映画を機にさらに多くの人に知られるようになってほしいものです。

句集の出版と自費出版詐欺

執筆者:凡夫

定型俳句であれ、自由律俳句であれ、俳句を嗜んでいれば、多くの自作俳句が出来てきます。
そうなると、やっぱり、句集として一つにまとめてみたいなと思うでしょう。
句集という俳人として生きた証ができるわけですから、俳人であれば句集を作ってみたいと思うのは当然かもしれません。

ちょっとした句集を作って、家族や周りの俳句友達などに見てもらうと言うのはよくあることです。
しかし、どうせ句集をつくるのであれば、多くの人に読んでもらいたいと思うでしょう。
そのとき、どんな句集を作るかというのが今回のテーマです。

パソコンやプリンターが身近にある時代ですから、簡単なものであれば自分で句集をつくることもできます。
それに電子書籍が増えてきていますが、こうした電子書籍であればほとんどお金を掛けずに作ることができます。
これからの時代の一つのスタイルと言えるでしょう。

しかし、紙の書籍という形は今でも魅力があります。
一つの記念として残したいのであれば、一応体裁が整った紙の書籍で句集にしたいと思う人も多いでしょう。
ですから、少々、費用を掛けても印刷会社に頼んで句集を作ってもらうのも悪いことではありません。

さらにもっと、きちっとした形のものにしたいのであれば、自費出版をするという選択もあるでしょう。
それなりにお金はかかりますが、どんな趣味でもお金はかかるもの。
旅行にしろ、ゴルフや釣りにしろ、それなりにお金はかかります。
そうした点から考えれば俳句はお金がかからない良い趣味だと言えます。
ですから、句集を出すぐらいの贅沢は許されると思います。

ただ、出版となると作家の印税生活をイメージしてしまうかもしれません。
しかし、よほど著名な俳人でなければ、句集が売れることはないでしょう。
それでなくても活字の本が売れない出版不況の時代ですから…
ですから、一般の俳人の方は書籍を売るという発想は持たないほうが良いでしょう。

と言っても、売ってお金を儲けるという考えでは無くて、単に本屋さんに自分の本を並べてみたいという欲求がある方もいるでしょう。
そんな方がターゲットになりやすいのが自費出版詐欺と呼ばれるものです。

この自費出版詐欺と言うのは書籍を作ってくれ、しかも本屋に流通させてくれるということで、本屋に自分の本を並べたいという方の夢を叶えてくれるものですが、そのかわりに高額の費用がかかるのが特徴です。
100万以上は当たり前で、200万円、300万円ということもザラです。
まあ、本を作らずにお金をだまし取ったり、本屋に並べると言って並べないような詐欺とは違います。
ですが、そもそも売れないとわかっているような本を高額で作らせて、その本の費用を著者に負わすわけですから、問題がある商法と言えるでしょう。

確かに本は出してみないと売れるかどうかわからないという面もあります。
ですが、通常の商業出版では売れなかったときのリスクは出版社が持ちます。
自費出版の場合、そうしたリスクをすべて著者が負うわけですから、出版社としては本が売れようが売れまいが利益が残るビジネスシステムとなっているわけです。

こうした中で自分の句集や詩集を出したいと思っている人は出版を決断する可能性が高いことから、ターゲットになりやすいと言われます。
もちろん、自費出版自体は決して悪いことではありませんし、そこから大ヒットして作家になった人たちもいます。

ですが、たくさんの売れない本を印刷し、しかも出版社と契約している一部の本屋の隅っこに並べることで、本屋に並べるという契約条件を満たしていると主張する出版社に大金を払って自費出版すべきかどうか一度再検討してみるべきです。
ただ書籍という形で印刷するのであれば、数分の一の価格でできるのですから。

島丁哉

島丁哉(しま ていさい)

本名・島 新
1877年? – 1948年(昭和23年)1月23日

層雲同人であり、俳画も書いた。
尾崎放哉と交流があり、小豆島時代には盛んに文通していたが、実際に会ったことは無かった。
放哉に句の批評を依頼し、その代わりに炭代を送っていたが、それが放哉の生活を支える一助となっていた。
放哉に「童子の放尿」を書いた絵を送ったが、この絵について放哉は「北朗来庵」で、北朗と二人で毎日見て喜んでいたと記載している。

略歴

現在の大分県宇佐市在住で、中津の富士坊績社で事務の仕事をしていた
行年71歳で逝去